疼痛医療センターでは、隔月で学内・学外講師による公開のセミナーを開催しております。 開催予定は、以下の通りです。 登録は不要、参加は無料です。ぜひ、ご参加ください。

次回セミナーのご案内

第26回 疼痛医療センター学術セミナー


日時:2018年3月22日(木) 17:30~
会場:大阪大学最先端医療イノベーションセンター1F マルチメディアホール
会場へのアクセス

講師:大阪南医療センター 免疫疾患センター部長 橋本淳先生
演題:『医学進歩の加速の中で考えるリウマチのトータルマネジメント
-Teaming, Transdisciplinary Team Modelから生まれる新たな発想-』

 

抄録

今後の医療を考える上で留意すべき時代の急速な変化として、医学情報・技術の進歩の加速と高齢者の急速な長寿化の二つがある。このような時代には、「The difficulty lies, not in the new ideas, but in escaping from the old ones, which ramify, for those brought up as most of us have been, into every corner of our minds. この世で難しいのは、新しい考えを受け入れることではなく、精神の隅々にまで根を張った古い考えを忘れることだ。」というジョン・メイナード・ケインズ(英経済学者)の言葉が大変大切になってくると考える。新しい情報を知り理解して講義も講演もできるけど行動は古いままという診療に陥らないように、私も常にこの言葉に助けられている。関節リウマチ(RA)医療の分野でも、さまざまな分子標的薬の登場によりそのゴール設定は大きく変わり、関節リウマチ診療ガイドライン2014には「臨床症状の改善のみならず、関節破壊の抑制を介して長期予後の改善、特に身体機能障害の防止と生命予後の改善を目指す」と記載されている。百寿者が既に7万人近くなりなお急速に増えている時代にあることを鑑みると、ここにある「長期予後」は目の前の患者が30歳であれば60-70年後も、60歳であれば30-40年後も元気で自立した生活が送れるのかを考えるように私自身はしている。医学の進歩を患者のよい治療結果につなげるためには、「今なんとか歩けていればいいか」という10年ほど前の感覚を捨てて自分自身の診療の進歩もなければ、医学の進歩が患者の利益としてつながらない。その意味で、100年前のケインズ先生の言葉が改めて大切になっていると考える。その上で、患者に生じてくる問題点は人生全体に眼を向けると妊娠・育児の問題、身体機能障害、就労の問題、足の感染、肺炎、経済的問題、社会心理的な問題、栄養障害、繰り返す骨折、廃用症候群やサルコペニアなど実に多岐にわたり、またいつどの問題がでてくるかもさまざまである。このようなRA患者の人生の中での多様なニーズに応じるには、関係職種が瞬時に連携する即時性と専門性が必要となる。我々の施設では相互乗り入れチームモデル(Transdisciplinary Team Model)のチームアプローチの概念を用いて、100歳長寿の時代に、多分野の急速な医学進歩の恩恵を患者治療成績に結びつける体制つくりを考えている。そのなかの一つとして、慢性疼痛管理の分野での医学進歩がリウマチ医療でも十分に患者に届くようにすべきと取り組んでいる。腎機能障害や消化管障害といったNSAIDsの問題点を回避するための疼痛管理能力はRA診療や高齢者診療では必要であることはもとより、RA患者が医療従事者からみて寛解に達していると判断されるにも関わらず、患者自身は疼痛等で苦しんでいると感じている場合への介入方法の確立も今後必要と考えている。たとえばRAの全般的な病状に関する患者評価のVAS(0-100mm)は医師評価のVASよりも高い例が多く、RA患者1650名を対象とした大島らの検討でみると、全般的な病状に関するその差(VAS gap=患者VAS-医師VAS)が10~30、30~50、50以上の患者比率はそれぞれ25%, 20%, 8%で過半数の患者は医師が考える以上に病状を悪く感じながらつらい思いをしている。患者VAS gapが大きい要因を生物心理社会モデルの視点で検討してその介入方法が確立することが一つの新たなニーズと考える。ちょうどこれに取り組む機会を2018年度からのAMED研究(班長柴田政彦教授)に分担研究者としていただき、現在その準備を行いつつある。生物学的モデルだけでRA患者の症状を捉えてRA診療をおこなっている平均的な考えからすると「なぜRAで生物心理社会モデルでの理解?」というような視点ではあるが、Transdisciplinary Team Modelの中で患者ニーズのマーケィングがやりやすくなれば自然に見えてくる視点である。このTransdisciplinary Team Modelは、生下時からの重症の障害を持った患者へのチームとしての対応の方法論として1980年代の英国からの報告にみることができる。患者だけでなく家族の状況も理解して、出生直後以降成長とともに次々と変わるケアや医療介入への対応を行う上で構築された方法論の一つである。多職種メンバーをそろえてチームをくむというmultidisciplinary team modelはリウマチ医療ではよい結果を残すことができなかったという2016年のBearneらの報告(1)は、医学の進歩が加速し、またリウマチ患者の長寿化も進む中でその不十分さを理解する上で参考になる。それゆえ我々はTransdisciplinary Team Modelを概念として取り入れているが、これは2012年にAmy C. Edmondsonが提唱した動的なチームアプローチであるteamingの理論(2)と共通した考え方である。医学以外の分野でも急速な時代の変化は生じておりそれに対応する方法としてTeamingは登場した。2017年に出版されたExtreme Teaming(Amy C. Edmondson)(3)には、「Unfamiliar connection between entities with different perspectives fuel creativity and innovation.」と書かれているが、まさに通常はない連携が新しい発想やイノベーションへとつながることは基礎研究から時代最先端の経済活動まで共通のことであり力を与えてくれる言葉である。

References:

  1. Bearne LM, Byrne AM, Segrave H, White CM. Multidisciplinary team care for people with rheumatoid arthritis: a systematic review and meta-analysis. Rheumatol Int. 2016 Mar;36(3):311-24.
  2. チームが機能するとはどういうことか TEAMING::How Organizations Learn, Innovate, and Compete in the Knowledge Economy Amy C.Edmondson, 野津智子訳 英治出版 2012
  3. Extreme Teaming : Lessons in Complex, Cross-sector Leadership Amy C.Edmondson and Jean-Francois Harvey, emerald Publishing 2017

 

今後の予定

4月以降の予定は未定です。予定が決まり次第お知らせします。

 

過去のセミナー

第1回

2014年1月20日
兵庫医科大学 解剖学講座神経科学部門・主任教授 野口光一先生
『痛みの分子メカニズム』

第2回

2014年3月
大阪大学産学連携本部 脳神経機能再生学・特任教授 齋藤洋一先生
『疼痛をデコーデッドニューロフィードバックおよび反復経頭蓋磁気刺激にて治療する』

第3回

2014年5月19日
(独)情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター・特別招へい研究員 Ben Seymour先生
“The architecture of the pain system”

第4回

2014年7月14日
大阪大学整形外科/国際医療センター・特任講師 史賢林先生
『炎症による痛みとよらない痛み。リウマチ患者の「痛み」を診る。』

第5回

2014年9月22日
順天堂大学医学部麻酔科ペインクリニック講座・教授 井関雅子先生
『疼痛緩和の日常臨床から見えてくるもの』

第6回

2014年11月17日
大阪大学大学院医学系研究科疼痛医学寄付講座・寄附講座助教 寒重之先生
『Resting-state fMRIで探る中枢機能障害性疼痛における脳機能異常』

第7回

2015年1月19日
東京大学医学部附属病院22世紀医療センター
運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座・特任教授 松平浩先生
『運動器疼痛へのアプローチ -疫学、メカニズムと層化、そして運動療法の重要性-』

第8回

2015年3月16日
大阪大学医学附属病院未来医療開発部未来医療センター
大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科)・特任講師 岡田潔先生
『疼痛治療薬の規制と開発の現状』

第9回

2015年5月18日
大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科・教授 仙波恵美子先生
『運動による疼痛緩和のメカニズム:エピジェネティクス修飾およびGABAニューロンの関与について』

第10回

2015年7月13日
大阪大学大学院医学系研究科医療経済産業政策学寄附講座・寄附講座教授 田倉智之先生
『慢性疼痛に関する疾病負担の改善がもたらす社会経済的な価値評価』

第11回

2015年9月14日
愛知医科大学学際的痛みセンター/運動療育センター・教授 牛田享宏先生
『神経の機能性変化と慢性痛』

第12回

2015年11月9日
大阪大学歯学部附属病院口腔補綴科・講師 石垣尚一先生
“Will today’s physical activity and sleep/arousal state affect tomorrow’s chronic pain intensity? A brief introduction of the methodology and preliminary results.”

大阪大学大学院私学研究科高次脳口腔機能学講座・准教授 杉村光隆先生
『歯科における難治性疼痛の臨床と研究 -痛みと女性ホルモン-』

第13回

2016年1月18日
(独)情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター・研究マネージャー 内藤栄一先生
『運動制御と身体認知を支える脳内身体表現の神経基盤』

第14回

2016年3月28日
早石病院 疼痛医療センター・センター長
大阪大学大学院医学系研究科疼痛医学寄附講座・特任准教授 三木健司先生
『「中枢機能障害性疼痛・特発性慢性疼痛」 -私の痛みはどこから来るの?-』

第15回

2016年5月19日
東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター神経科学部 加藤総夫先生
『神経可塑性病としての慢性痛』

第16回

2016年7月28日
大阪大学大学院医学系研究科漢方医学寄附講座 萩原圭祐先生
『心と体のレジリエンスを高める漢方医学―漢方を理解するヒントと薬効の分子機序について』

第17回

2016年10月3日
Adjunct Professor, Dept. Anesthesiology, University of California San Diego & CEO, BioIntervene Inc. Gary J. Bennett
The role of adenosinergic neurotransmission in peripheral neuropathy

第18回

2016年11月24日
日本医科大学薬理学講座 鈴木秀典先生
『神経障害性疼痛におけるノンコーディングRNAの役割』

第19回

2017年1月17日
大阪大学大学院医学系研究科 疼痛医学寄附講座 柴田政彦先生
『痛みのコアカリキュラム』

第20回

2017年3月16日
大阪大学大学院歯学研究科 高次脳口腔機能学講座 口腔生理学教室教授 加藤隆史先生
『睡眠時ブラキシズムの病態生理とその研究』

第21回

2017年5月18日
九州大学病院 心療内科 診療准教授・副科長 細井昌子先生
『慢性疼痛難治化におけるミクログリア仮説の検証:心身医療のナラティブとエビデンスの融合』

第22回

2017年7月13日
大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(整形外科) 助教 田中啓之先生
『末梢神経再生治療薬開発に向けたドラッグリポジショニングによるアプローチ』

第23回

2017年9月21日
大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科学 学部内講師 上田豊先生
『子宮頸がん予防の観点からHPVワクチンを考察する』

大阪市立大学大学院医学研究科 公衆衛生学 教授 福島若葉先生
『青少年における「疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状」の受療状況に関する全国疫学調査:厚生労働省研究班によるHPVワクチン安全性研究結果より』

第24回

2017年11月16日
名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻 運動・形態外科学 手の外科 教授 平田 仁先生
『手外科における複合性局所疼痛症候群の発症リスク分析と、脳機能解析による客観的評価法の開発』

第25回

2018年1月18日
大阪大学大学院人間科学研究科 准教授 佐々木淳先生
『認知行動療法・行動科学の基礎』