大阪大学大学院医学系研究科 神経難病認知症探索治療学寄附講座

異常RNAが原因となる神経変性疾患に対する治療研究

 原因遺伝子のタンパク質をコードしない非翻訳領域(5’UTR、イントロン、3’UTR) 内にある繰り返し配列(リピート)の異常伸長または挿入が原因となる神経変性疾患の一群が知られており、これらはノンコーディングリピート病と総称されています。いくつかの脊髄小脳失調症(SCA8: CTGリピート、SCA10: ATTCTリピート、SCA31: TGGAAリピート、SCA36: GGCCTGリピート)、C9ORF72遺伝子異常によるALS/FTD(C9-ALS/FTD: GGGGCCリピート)、筋緊張性ジストロフィー(DM: CTGリピート)、脆弱X関連振戦・失調症候群(FXTAS: CGGリピート)などが知られており、いずれも挿入された異常伸長リピート配列から異常リピートRNAが転写され、神経・筋細胞内で凝集して蓄積しています(RNA foci)。近年FXTASやC9-ALS/FTDでは、転写された異常リピートRNAを鋳型として、開始コドンATGがないにもかかわらず、全く新しい翻訳メカニズムであるリピート関連ATG非依存性翻訳(repeat associated non-ATG translation: RAN translation)により異常なリピートペプチドが産生され、それが神経変性の原因になることが示唆されています。

 私たちの研究室では、SCA31おびC9-ALS/FTD、さらにSCA36について病態発症分子メカニズムの解明と治療法開発を目指した研究を行っています。
最近、SCA31についての東京医科歯科大学との研究共同により、異常UGGAAリピートRNAに対してTDP-43などのRNA結合タンパク質がRNAシャペロンとして働き、異常RNAの凝集・蓄積やリピート関連翻訳を阻害して、神経変性を抑制することを発見しました(Neuron 2017、プレスリリース)。

 さらに、毒性のない短いUGGAAリピートRNAが逆にTDP-43の凝集、神経毒性を抑制することから、RNAとRNA結合タンパク質とのクロストークのバランスが破綻することでノンコーディングリピート病やALS/FTDが発症するという新しい概念を提唱しました。この結果から、これらのバランスを補正することがSCAやALS/FTDの治療戦略になることが示唆されました。

 

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