大阪大学大学院医学系研究科 神経難病認知症探索治療学寄附講座

タンパク質の異常凝集が原因となる他の疾患に対する治療研究

パーキンソン病/レビー小体型認知症の原因究明と治療法開発

 パーキンソン病は、主に中脳黒質のドーパミン神経細胞の変性・脱落により、手足の震え、筋肉の強張り、動きづらさなどが現れる、進行性の神経変性疾患です。神経細胞内ではαシヌクレインタンパク質が異常構造変化を起こして、レビー小体と呼ばれる封入体に蓄積することが知られていますが、その原因は未だ十分に解明されていません。一方、レビー小体型認知症と呼ばれる認知症でも、αシヌクレインタンパク質がレビー小体に蓄積することが知られています。

 私たちは、パーキンソン病の強力なリスク遺伝子であるグルコセレブロシダーゼ(GBA)遺伝子に着目した研究を行い、GBAの機能低下により蓄積した糖脂質グルコシルセラミドがαシヌクレインタンパク質のプリオン様異常構造化を引き起こし、神経変性を促進することを見出しました(Hum Mol Genet 2015、プレスリリース)。これは、“元来無毒であるはずのαシヌクレインタンパク質がどのようにプリオン様異常構造化するのか”という本質的な疾患発症メカニズムの一端を解明したものであると考えられます。今後は異常構造化したαシヌクレインタンパク質がどのように脳内を伝播するか、他のリスク遺伝子がどのようなメカニズムで発症に関わるかなどをさらに検証していくことで、パーキンソン病およびレビー小体型認知症の発症・進行メカニズムの全容解明を目指します。また、これらの過程を抑えることによる新たな治療・予防法の開発へ貢献したいと考えています。

筋萎縮性側索硬化症/前頭側頭型認知症の原因究明と治療法開発

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、大脳皮質運動野や脊髄の運動神経が変性・脱落することで、筋肉がやせ細って運動障害を呈する進行性の神経変性疾患です。中高年での発症が多く、様々な部位の筋力低下に伴い、構音障害、嚥下障害、運動障害、呼吸筋麻痺が起こり、多くは発症から5年以内で死亡します。日本における患者数は、約9,000人と見積もられています。一方、前頭側頭型認知症(FTD)は、大脳の前頭葉および側頭葉の神経変性により認知症を呈する神経変性疾患です。アルツハイマー病、レビー小体型に次いで多い変性性認知症であり、人格変化、行動異常、失語症が認められます。

 2006年にALSとFTDに共通して凝集・蓄積しているタンパク質としてTDP-43が発見されました。さらに、遺伝性ALS/FTD家系においてTDP-43遺伝子の変異が発見されたことから、ALSとFTDには遺伝学的および病理学的に共通の分子基盤が存在すると考えられています。TDP-43はRNA結合タンパク質であり、RNAの転写、スプライシング、輸送、翻訳など多様なRNA制御に関わることが知られており、ALS/FTD病態にはRNA代謝障害が関与することが示唆されています。

 私たちの研究室では、培養細胞、ショウジョウバエ、マウスを利用してALS/FTDの病態発症機構の解明と治療法開発を目指した研究を行っています。これまでにヒトTDP-43やFUSを発現させるALS/FTDモデルショウジョウバエを樹立し、TDP-43の凝集・蓄積が神経変性に関与することを示し、さらに遺伝学的スクリーニングから神経変性を改善させる分子の同定に成功しています。また、ALS/FTDの治療法確立へ向けて、TDP-43を標的としたアンチセンス核酸による核酸医薬や、低分子化合物ライブラリーを用いての分子標的治療薬の開発を試みています。

PAGE TOP