研究実績・学術活動

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常にベッドサイドを意識した基盤研究と
Academic Surgeonの育成を

宮川 繁

当研究室の研究の基本理念は、10年後を見据えた、常にベッドサイドを意識した研究テーマの構築と実践、特にトランスレーショナルリサーチを真髄とした研究を基盤として発展してきました。

当研究室の研究で特筆すべきは、細胞シートのトランスレーショナルリサーチであり、またこの技術を基盤技術としたiPS細胞関連技術の発展につきると思います。

自己筋芽細胞シートは2002年から東京女子医科大学との共同研究のもと、基盤研究から始まり、臨床研究、企業治験、医師主導型治験を経て、世界初の心不全に対する再生医療製品「ハートシート」として、虚血性心筋症に対して保険償還されました。本技術は我が国の誇るトランスレーショナルリサーチの賜物であり、日本国内のみならず世界に向けて、本講座が既存の治療概念にとらわれない、レベルの高い基礎データを有する新しい製品を世の中にだすことができる研究室であることを世に知らしめ、最近では、当研究室の持つこの能力が高く評価され、国内外の企業が我々の教室への参入、投資を希望しています。多数の企業の参画による強固な産学共同開発体制、多額の研究資金投入、及び優秀な人材の確保により、我々の製品開発の速度はさらに加速しており、我が国を代表するトランスレーショナルリサーチを専門とした研究機関に発展しようとしています。

iPS細胞に関しては、2006年から京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授と共同研究を開始し、筋芽細胞シートで培ってきた技術を参考にしながら、臨床応用の上で問題とされてきた造腫瘍性を克服し、来年には世界初のiPS細胞由来心筋細胞を用いた心不全患者に対するFirst in human試験を行う予定です。

また、当研究室が達成したこの10年間の業績としては、上記のような新しい治療概念を持つ製品を開発することだけではなく、同製品を世に出すシステム、特に、臨床研究、医師主導型治験を心臓血管外科単独で行えるシステムを構築できたことです。単独の科で、臨床研究、医師主導型治験が可能な研究室は国内外に存在せず、製品開発の加速化とともに、同システムの存在により、製品の上市化がさらに加速化するものと期待されます。

一方で、先輩方が開発されてきた既存の治療法、及び本講座がこの10年で開発してきた製品による新規治療法を駆使しても、依然治癒することが困難な疾患も多数存在していることも事実です。同事象を鑑みながら、さらに新しいコンセプトを兼ね備えた新規治療法の開発を行っており、心臓血管外科学とは一見関係無いような様々な学問・技術を用いて、拡張型心筋症をはじめとした難治性疾患をターゲットとした新しい治療体系の確立を目指しています。

主なものは、筋芽細胞シートの持つメカニズムを駆使し、血管新生、抗線維化作用を有する新しい薬剤を開発し、本薬剤を用いた冠動脈バイパス術との併用治療、および病態の悪化を防ぐ「早期治療介入」を目的とした内服製剤の開発を行っています。また、iPS細胞から分化誘導し、作成した心筋細胞を用いて三次元組織を構築し、同組織が心筋組織と生理学的に相動性が高いことを既に示しています。同心筋組織を薬剤スクリーニングシステムとして用い、他疾患ですでに臨床応用されている薬剤が拡張型心筋症治療に応用できないか、いわゆるドラッグリポジショニングを行っており、候補薬剤の同定を行っています。本技術により、重症心不全に対する新しい薬剤がスクリーニングされ、当科で培った臨床研究・治験システムにより、早期上市化が行われるものと思われます。このような新規薬剤は、内服による治療だけではなく、心臓血管外科的手術手技と混合されることにより、心臓血管外科学の新しい扉を開くことが期待されます。

上記の基盤研究の他、ハートシートに続く、次世代のシーズは多数存在しています。これらの研究を強くサポートしているのは、国もしくは企業から得た研究開発資金であり、これまで獲得した総研究費は70億円に達しており、今後さらなる研究費獲得の可能性があります。この研究資金獲得実績は、国内でも指折りの実績であり、当研究室で行っている開発項目は、国の研究開発指針の根幹事業にもなっていることを表しています。これら多額の研究費が継続して当研究室に支給されることは、国内産業、学問の発展を主たる目的とする国、企業の期待どおりに研究が進んでいることを意味していますが、今後、国からの研究費拠出に頼らない研究資金の確保の方法を模索していく必要があると思われます。

これまで当教室では、新しい製品の開発だけではなく、トランスレーショナルリサーチを通じて、Academic Surgeonを目指した人材の育成を行ってきました。この10年間でpublishした論文は446編に達し、アメリカ心臓病学会には、これまで122編の発表を行い、年を追うごとに演題数は増加し、本年度は26演題の発表を行っています。世界的に見て、国際学会の活動はトップクラスであると自負しており、国際学会での発表をもとにして、33名の医学博士取得者を輩出し、当科が理想としているAcademic Surgeonの育成を行ってきました。また、当研究室の規模は拡大傾向を続けており、現在、指導教官13名、ポスドク・特任助教11名、大学院生16名、研究員4名、実験助手6名、企業派遣5名、臨床研究コーディネーター4名から構成されており、このような大規模な研究室は国内外で類を見ません。これまでの、当研究室の活動が高く評価され、当研究室に参画する企業は19社を数え、企業出資による心臓血管外科関連共同研究講座は4講座がすでに設立されており、来年春には2講座の開設が予定されています。新しい心臓血管外科学の創造という当科が掲げる理想を追求し、様々な分野に精通した多数の有能な研究者を招聘することにより、研究室に多様性を持たせ、新しい発想が創造される組織に発展してきております。

共同研究講座

慢性心不全総合治療学

r-001

麻野井 英次

特任教授

重症下肢虚血治療学

r-015

澁谷 卓

特任教授

最先端再生医療学

r-016

宮川 繁

特任教授

r-010

笹井 雅夫

最先端生成医療学共同講座 特任講師

r-005

小田 紀子

特任助教

循環器再生創薬学

組織・細胞設計学共同研究講座

r-008

南 一成

特任准教授

r-013

伊勢岡 弘子

特任助教

バイオデザイン学

未来細胞医療学

r-012

齋藤 充弘

特任准教授

心臓血管外科 上級オフィサー

r-011

酒井 芳紀

上級オフィサー

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